2019年11月8日金曜日

秋の衣笠の話





学生時代、そこそこ長く京都にいた。



ある秋、龍安寺の方を訪れた

他も回っていたので割と時間が遅くなってしまい、日暮れ近くなっていた

龍安寺は京都盆地の北西の端あたりにある寺だ

京都は中心部こそ街中だが、盆地の縁に近くなると、山里じみた景色になっていく

夕暮れ時、11月の肌寒い風に吹かれつつ参道を行く

もう一枚カイロを貼っておけばよかった

つと道を曲がり、西に向かう

顔を上げ、思わず目を見開く

橙色の夕焼け空と、葉が落ちて痩せた木々のシルエットが広がる

秋の夕暮れ、湿った土と枯れ木のにおい

きれいな景色なのかはわからないけれど、覚えておこう、と思った



今よりずっと未来に希望があったころの話。

今いる場所は、そもそも近くに山などないし、あったとしてもビルで見えないし、木といえば街路樹があるくらいだ。
あんな風に秋を味わうことはできない。

今年も遠出するような余裕はできなかったので、残念だけれど仕方ない。



(冒頭画像は、S. Hermann & F. RichterによるPixabayからの画像)



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